マネキンの目線を感じる娘の心

ピエロのあの顔、少し怖い私は幼いころにサーカスを見に行った夜、怖くて母から離れられずに泣きながら寝た記憶があります。
そんなことを思い出したのは、娘とこないだ買い物に行った時の出来事があってからでした。

デパートに2人で娘と出かけたのですが、娘がデパートの真ん中で立ち止まっているのです。
通行路だったので、邪魔にもなるし、娘にさっさと歩くように話しました。
それでも、ぴたりとも動かず、さっきからただ一点を見つめているのです。
私は何があるのだろうと視線の先に目をやりました。

そこにはマネキンがあったのです。
そして、黒いマネキンと白いマネキンがありました。
目も鼻も口もなく、それは本当に絵本の中に出てくるのっぺらぼうのような感じです。
娘はそのマネキンを黒、白交互に見つめています。

もう一度早く行こうと声をかけようとした時です。
私の足にしがみついて、「こっちを見てる!怖い…!」と小さな声で呟きました。
目のないマネキンを見て、こっちを見てるんなんて言われると私も少し怖くなってしまいます。
抱っこして、その場から遠ざけようとした時ですら、ずっとマネキンを見つめていた娘。

怖いなら見なければいいのに…と思ったのですが、やはり怖いからこそ見てしまうのが人間なのかもしれません。
それからはそのデパートに行こうと誘うと、いやという娘。
確かに白いマネキンならともかく、黒いとびっくりしてしまうのでしょうか。
もちろん、怖いと言った夜は私に離れることなく眠った娘を少し可愛いとも思いました。

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