フランス料理の素晴らしさ
私はフランスに行ったことはないが、フレンチという料理は計り知れないものだと思う。
あんなに見た目が凝りに凝った料理と言うのは、フレンチか懐石料理くらいしか思い浮かばない。
皿の上に、絶妙のバランスで盛られた料理たち。
もちろん皿の余白部分も作品の一部だ。
ソースで描かれた模様もしかり。
そして、なにやらとても立体的かつ構造的。
食べるのに一苦労するであろうことは、作品としての価値に影響しないのである。
そんな視覚的要素はもちろんのことだが、何が一番すごいかと言うと、何の素材を使っているのか分からないのに、まず美味しいだろうという自信を持ってトライできるということ。
私は割と偏食で、見たこともないものを食べると心臓がばくばくして息ができなくなるのだが、ことフレンチに関して言えばその症状に陥らない唯一の料理だ。
テリーヌのようないろんなものがまざってしかも原型を留めていないようなものでも、どきどきしないで食べられる。
個人的には驚異なのである。
これはシェフにおける絶対的信頼の現われであろう。
素材や調理法にこだわっているに違いないという自信。
美味しくないものを、芸術家のシェフが食べさせるわけはないという信頼。
これは、フレンチという料理の歴史、ひいてはそのバックグラウンドであるフランスという国の歴史がなせる業である。
そしてもちろん、先に述べたとおり、視覚的効果の影響も忘れてはならない。
お洒落なものを食べている、という事実が、美味しいに決まっているという、一種のまじない効果を発揮しているのだ。